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2007年5月10日

ドッペルゲンガー

GeminiEngine1.jpg

アメリカから日本に帰ってきて、かなり経った。
余りにも忙しくて更新する暇がなかったのだが、過去の分も含めて一気に書き連ねることにした。

というのも、ある取引会社とのミーティングの席。
この打ち合わせは、相手の会社にとってはかなりシビアな状況で、この様な場合、自分としてもかなり気を使う。
その最後の最後に相手からいきなり・・・・
「最近ブログ更新してませんよね?」
「はぁ?(と、とぼけるもバレバレ)」
「いやぁ、うちの会社でも見てるんですよ」
自分の部下もその席にいたのだが、正直恥ずかしいのなんの。どうやって知ったのだろう?

というのはさておき、日本に帰ってきて驚いたことがある。
それが冒頭の画像、いや映像である。
自分がこの映像を初めて見たのは、TV東京の「ガイアの夜明け」の間に入ったCMだった。

LSI開発

遡ること3年前・・・・・
いきなり部長に呼び出され「是非ともやってもらい事がある」と切り出された。
話を聞くとLSIを開発して欲しいとのことだった。それもかなり特殊で、今まで自社で開発したこともなければ、ほぼ全員そんなもの出来るわけないと思っており、関わるのも憚れる様なシロモノだった。
自分は別の仕事をしていたし、もうLSIの開発は金は掛かるは、疲れるはで、正直全くやる気が起きなかった。

「いやぁ、もう某取締役からオマエを使うように言われてて、誰も断れないんだよ」
もう全く逃げ道のない状況!さらに社員のリストを出してきて、
「この中から誰でも好きな人をピックアップしていい、もう自分の思うように好きに開発して良いから」
「いや、このリストにないXX氏とXX氏も欲しい」と言うと、すぐに電話を掛けて話を取り付けくれた。どうも事業部でも最優先のプロジェクトになっているらしい。
ここまでしてくれると断れる訳もない。

というわけで、3年前の夏、あるLSIの開発が始まったのであった。

Doppelganger (ドッペルゲンガー)

以前、プロジェクトの名前について書いたことがあったが、まずは名前決め。
周りからは非常に不評だったが、無理を通して「ドッペルゲンガー」と決めた。
元ネタは中学時代に遊んだブラック・オニキスというパソコンのゲームだ(PC-8801無印で、カセットテープからプログラムを読み込んでいた)。
ゲームの終盤にやたら強い敵が出てくる。ドッペルゲンガーという自分と全く同じ強さ、防御力を持つ敵だ。まさに鏡映しの自分が敵として出てくるのだ。

今回の開発には正にうってつけの名前。そう、名前の通り開発しようとしていたのは、2個のLSIを鏡写しのように、全く同じ動作をナノ秒(1億分の1秒)単位で行うことだった。
しかも片方が壊れても、それを検出してもう片方が稼動を続けるというものだ。

当時、某取締役が「ドッペ、ドペル・・・馬鹿やろう!言いづらい名前付けやがって!」と舌をかんでいたのが思い出される。

GeminiEngine (ジェミニ・エンジン)

というわけで、なんとか製品化に漕ぎ着けた訳だが、エンジニア生命を掛けたといっても過言でもない程凄まじい開発だった。何から何まで全て自分の好きなように開発させてもらったのは良いが、逆にプレッシャーと重圧は凄まじいものがあった。
とにかく、今まで誰も作ったことのないもの。誰にも作り方を聞くことも出来ないし、全てを自分の責任で決めなければならなかった。
(ちなみに開発したLSIは、一般的な言い方をするとノースブリッジである。CPUはIntelなのは普通だが、サウスブリッジはAMDという、有り得ない作りである。「ウチのLSIをIntelにつなぐなど許すわけにいかん!」とAMDから怒りをもって拒否されたのが懐かしい。後に日本AMD社長にまで掛け合ってやっと許可が出たが。)

さて、出荷に漕ぎ着けたのはいいが、営業に言わせると、マーケティング的に「ドッペルゲンガー」という名前はいまいち良くないという。そりゃそうだ、単なる開発コードネームだ。
で、結局「鏡写し」=「双子」=「ふたご座」=「ジェミニ」ということで、そのLSIはジェミニエンジンと名づけられ登録商標まで取るに至った。

GeminiEngine2.jpg

自分は、出荷を見届けてすぐに米国に赴任に相成ったのであった。

TV CM

いやぁ、驚いた。
何が驚いたって、名前こそジェミニ・エンジンだが、あの「ドッペルゲンガー」がTV CMで宣伝されているではないか!

長いことコンピュータを開発してきたが、ほとんどは企業向けのサーバであり、CMで紹介されることは決してなかった。
ところが、今回開発したLSIとサーバはフラグシップ的な扱いを受け、私が日本にいない間に大々的な宣伝がされていたらしい。

それにしても受けるCMだ。ドリフじゃないんだから!

ジェミニ・エンジン CM

暇な人は見てみてね。

なお、面白いもので、あれほど「ドッペルゲンガー」の名前は言いづらいことで嫌われていたが、今や会社内では「ドッペル」「ドッペルちゃん」「ディー・ジー(Doppelganger)」と呼ばれていて、決して「ジェミニ・エンジン」と呼ばれることはないのである。

投稿者 abeshin : 2007年5月10日 01:31

コメント

投稿者 りゅうてつ : 2007年9月 9日 20:19

CM見て、ああこれかと言う感じ。
確かに、見たことがあるCMだったけど、まさしくドリフそのものじゃない。
まさか阿部のLSIとは思いませんでした....

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