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2001年2月 1日

セロハン3D

日ごろから3DCGを作って楽しんでいるが、娘の月刊誌「たのしい幼稚園」の今月の付録は昔懐かしい3Dの原点を思い出させるものだった。

この写真ですべてが分かるだろう。
そう、左右の目で異なる赤と青のセロハンを通して特殊な絵をみると目の錯覚で立体、つまり3Dに見えるというものだ。

ちなみに雑誌には以下のような絵が付いていた。

いやぁー懐かしいなぁ。
と、娘以上にこの3Dを楽しんでいたかもしれない。

「昔さ、よくこの絵を自分で書いて立体だ!って遊んでたんだよ」
「ちょっと、赤と青の色鉛筆を持ってきてごらん」
「ほらほら!このパパの書いた絵も立体に見えるでしょ?」

と、童心に返ってこのセロハン・メガネで娘と遊んでいたのだが、ハタと思った。
大人になった今ならマジでリアルな3Dの絵を作れるなぁ・・・
と思うやいなやすぐにデジカメでいろいろ写真を撮りだした。

原理的にはカメラを三脚に固定し写真を撮り、次いで目と同じ間隔10センチくらい水平にカメラを移動させてもう一枚写真を撮る。最後にその2枚の写真をパソコンで合成する。
さて合成だが、注意すること一つある。

最終的にどのメディアで「見る」かである。
ディスプレイに映してみるのと、実際に紙に印刷するとでは合成方法は大きく異なる。

ディスプレイに映して見るときは、写真はブラウン管の光によって直接目に届くため、光の三原色であるRGBモードで合成を行う必要がある(R=赤,G=緑,B=青)。
下は(R)-(B)で合成した写真。Gは黒(光なし)。

もし赤と青のセロハンが手元にあれば、青を左目、赤を右目にしてこの画像を見ると立体に見えるはずだ。

こちらはカラー版で、(R)-(GB)として合成している。上のモノクロに比してちょっと見づらいが、それなりに立体的に見える。
カラーが可能なのは、実は青のセロハンは赤緑青のうち緑と青の両方の光を通すからである。

赤セロハン側は

・黒になる色:緑、青、シアン
・白に埋没する色:赤、赤紫、黄色

青セロハン側は

・黒になる色:赤
・白に埋没する色:シアン

こう見ると結局、赤-シアンしか使えなく、R-Bの先の写真が単にR-GBになるだけのような気もするが、別に白に埋没させてシアンを消す必要は全く無い。

片目ずつ絵を描くという観点で見ると
赤セロハン側(モノクロ)

・暗いところ:黒、緑、青、シアン
・輝度の変化:白、赤、緑、青、シアンの輝度変化
・明るいところ:白、赤
と、モノクロ画像を作るのに、こんなにも色が使用できる。

青セロハン側は赤で使った上の色が使えるから。

・暗いところ:黒、赤
・輝度の変化:白、青、緑、シアンの輝度の変化
・明るいところ:白、青、緑、シアン

であり、さらに青セロハンはGBを通すから、結果的に赤側-モノクロ、青側-擬似カラーが実現可能となる。
といっても、所詮赤セロハン側の目はモノクロなので、カラーとしては限界はある。

さて、これを最後に印刷するのだが、最終メディアが紙(写真)などの印刷物の場合、今までのディスプレイ上のRGBとは全く事情が異なる。
それは写真は自ら光を発していないからである。
ディスプレイの場合、赤いセロハンは単にRの光をを通し、青いセロハンはGBの光を通す。つまり、片側のチャンネルは全て赤を使って描き、もう片側のチャンネルはGBで描き、単純に光の三原色のルールで合成すればよい。
上の写真はこのルールで合成しただけである。上のRB写真で紫色となっているところは実はGBが混ざっているところであり、セロハンを通した場合は片側の色しか見えない。
ところが、試しに上のRB写真を印刷してセロハンを通すと紫味が強すぎて暗い写真になる。ディスプレイを通して見た時とはまったく別物になってしまうのである。

なぜか?
可視光線はRGBの複合光線、つまり白い光として写真に当たる。
写真に塗りつけられている塗料により、RGBのいずれかの要素が吸収された後に目に届く。
例えば、りんごが赤く見えるのはG(緑)とB(青)の波長が吸収され、R(赤)のみが目に届くからである。
印刷物は常に光を吸収する方向にあリ、上のRGB合成された写真は光を放つディスプレイ上のみで成り立つ。光は重ねても暗くはならない。その証拠に赤青緑の光を重ねると白になる。ところが印刷物上の色は重ねれば重ねるほど暗くなる方向にしか行かない。上の写真を印刷してセロハンを通しても暗い写真になるのはこのためである。

先ほど赤いりんごの話を書いたが印刷物の色は、厳密に以下の関係がある。

・赤い光だけを吸収する色は「水色(シアン)」
・緑の光だけを吸収する色は「赤紫(マゼンタ)」
・青い光だけを吸収する色は「黄色(イエロ)」

である。赤はマゼンタとイエロを混ぜて作られる色であり、上記の属性はそのまま引き継がれ、その物体は緑と青の光をを吸収する。よってりんごは赤く見える。

セロハンに話を戻すが、
セロハンを通して物を見るということは、光を白ではなくセロハンの色にしてしまうということを意味する。
つまりシアンの物体を赤いセロハンで見ることは、その物体に赤い光を当てることと等価である。この場合シアンを含む色はその赤い光を吸収するため黒く見える。
同様に赤いセロハンで白、赤紫、黄色、赤などの、赤い光を吸収しない色を見た場合、それらは明度の差こそあれ、すべて赤く見え区別がつかなくなる。

一旦整理すると赤セロハンを通過した場合

・黒になる色:シアン、青、緑
・白に埋没する色:赤紫、黄色、赤

青いセロハンの場合は厄介である。
先ほどのRGBのところで書いたが、青いセロハンは厳密に青ではないようである。その証拠に緑と青の波長の光を通してしまう。
つまり、青のセロハンが黒く見える色はイエロとマゼンタの合成色である赤のみであることになる。
一方白に埋没する色は・・・
白地に青:白地から青と緑が目に入るが、青は当然緑成分が無いからNG
白地に緑:白地から青と緑が目に入るが、緑は当然青成分が無いからNG
白地に水色:白地から青と緑が目に入り、水色は青と緑の両成分を持っているからGood!
という訳で白と区別できない色はシアン一色しかない。

一旦整理すると青セロハンを通過した場合

・黒になる色:赤
・白に埋没する色:シアン

上の赤セロハン通過と比較すればよく分かるが、全ては青セロハンの属性で決まっているのである。
という訳で、ディスプレイでは青セロハン側で青、緑、シアンの3階調が使用できたため擬似カラーが可能であったが、印刷物では青セロハン側はシアン一色しか許されないため擬似カラー化が不可能であることが分かった。

という訳で、印刷物はR-GBではないのである。赤とシアンなのである。
印刷物はCMYKで表され、シアン(C)、M(マゼンタ)、Y(イエロ)、K(黒)となっている。
つまり、CチャンネルとMYチャンネルのペアC-MYで作ればよいことになる。

上はC-MYで作った立体画像。
RGBの写真とはちょっと違うはずだ。実際印刷した中では一番綺麗に見えた。

というわけで、リアルな3D画像を作ってみたわけだが、実はなんだかんだの試行でC-MYにたどり着くのに紆余曲折があり、結構時間がかかったお遊びであった。

投稿者 abeshin : 2001年2月 1日 01:36

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