2010年8月 6日
コガネムシと偏光
夜に門の上をふと見てみると、綺麗に緑色に輝くコガネムシが2匹いた。
写真の通り、左側の草木の緑と相まって、電球に照らされたコガネムシも本当に美しい緑だ。
これは写真に撮っておこうと、カメラを引っ張り出しストロボ発光して撮ってみた。
そのプレビュー画面を見て驚いた。色が全然違うのだ!
再度確認する。
電球に照らされたコガネムシの色は両方とも緑だ。
上の写真は、夜中に電球の明かりだけで撮影しているので、レンズの絞りを開かざるを得ず、後ろのコガネムシにはピントが合っていないが、確かに両方とも緑色である。
念のため、後方のコガネムシにピントを合わせて撮影。
さて、それではストロボ発光させた写真を見てみよう。
驚きの結果である。
後方のコガネムシの色が茶色になって写ってしまうのである。
正確には、ストロボの光を浴びると、反射光が茶色に見えるのである。
同じコガネムシ ~ 左:ストロボ / 右:電球のみ
並べると、その色の違いに驚く。上の写真、両者とも全く同じコガネムシである。
左がストロボ、右が電球の光だけ。
当初、光の当たる角度が関係するのだと思い、色々な角度から撮ったが、相変わらず後方のコガネムシはストロボを発光させると茶色だし、手前のコガネムシはどんな撮影の仕方をしても緑色のままだ。
円偏光
その後、色々調べて分かったのだが、コガネムシの体の表面は、液晶のような構造色(光の波長程度の微細な構造で様々な色を発する)を持っており、円偏光の一方を選択的に反射するのだそうだ。
コガネムシの体には実際には色が着いているわけではなく、光の波長の一部を吸収するために、様々な色に見える。これを構造色と言い、CDやDVDの裏面が虹色に輝くのもこのせいだ。
さてコガネムシで不思議なのは円偏光のくだりだ。一般的に、コガネムシの体は螺旋の微細構造のため、右偏光板/左偏光板のどちらかで、下地の本当の色として、茶色に見えるそうだ。
さて、いま当たり前のように「円偏光」という言葉を使ったが、「円偏光」とは一体何だろう?
単なる「偏光 (直線偏光)」は高校時代に物理で習ったし、「一方向にのみ振動している光」なので理解しやすい。
しかしこれに「円」が付くとどうにもイメージし難い。
元々、光は電磁波であり、電場とそれに直行する磁場から合成される波である。
通常の光は、ありとあらゆる電場と磁場が混然一体な状態であり、偏光は電場/磁場の振動がある一方向のみの光である。
直線偏光の場合、電場と磁場の位相は等しい。しかし両者の位相がずれると楕円偏光となり、90度ずれると円偏光になる。位相のずれ方によって右偏光、左偏光と2種類に分かれる。
理屈は分かるのだが、90度位相がずれた状態というのを、どうにもイメージし難い。
さて、話をコガネムシに戻す。
今一度繰り返すが、コガネムシに当たった光の反射光は円偏光となり、右偏光板、または左偏光板を通して写真撮影すると、どちらか一方はそのまま色に変化はないが、もう一方の偏光板を通すと茶色、つまり下地の色が見えるという。
違うコガネムシだが両者ともストロボ撮影 ~ 左:奥のコガネムシ / 右:手前のコガネムシ
今回のケースでは、円偏光板を使っている訳ではないのに、片一方のコガネムシのみが茶色になる。
ストロボの光が円偏光しているのだろうか?
とにかく、ストロボの光の波長が複雑に絡んで、一方は茶色に見えるのだろうと思われるが、緑色のままの個体の方との差は何なのだろう?
まさか、一方のコガネムシは左螺旋で、もう一方は右螺旋という特異個体だったのだろうか?
この辺はもう少し調べて、別のエントリとして報告したいところだ。
投稿者 abeshin : 2010年8月 6日 02:54